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Drug Delivery System研究の重要性

2006/10/16

田畑教授のコラムを掲載します。

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さて、皆さんは、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System, DDS)という言葉にどういうイメージをお持ちでしょうか?drug = 薬物 = 治療、delivery = 送達 = 宅配便という先入観をもち、DDSが薬物治療を目的とした薬物送達のための技術、方法論であると、頭に思い浮かべる方がほとんどではないか、と思います。なぜなら、薬学書籍コーナー以外のところで、DDSの本を目にすることはこれまでにはありませんでした。

「drug」という言葉の意味を英英辞典で調べてみますと、”Substance used for the treatment or prevention of disease (病気の治療、予防に用いられる物質)”とか”Substance taken for the effects it produces (生じる効能、効き目のためにとられる物質)”と記載されています。ここからお分かりの通り、「drug」とは、特に、治療を目指した物質に限定されているわけではありません。つまり、DDSとは、投与(送達)方法や形態を工夫し、drugの体内での動きを精密にコントロールすることによって、作用発現部位に望ましい濃度―時間パターンのもとに選択的に送り込み、結果として最高の生物効果を得ることを目的としたdrugの投与(送達)に関する概念なのです。

これまでの基礎、応用研究の発展の経緯から、薬物治療のための技術、方法論であると考えられてきたDDSが、実は、基礎生物医学あるいはその関連応用分野、さらには再生医療などの先進医療をも含んだ広い研究開発に必要不可欠な基盤技術であることを読者の皆さんに是非ご理解していただきたい、と考えています。最終目的が何であれ、水溶液中あるいは体内で不安定かつ作用部位の特異性もないdrug(物質)を利用する限り、DDSの技術・方法論がなければ、その効能、効き目を期待することはできません。

したがいまして、DDSを薬物治療の基盤となる技術体系として位置づけたこれまでの流れからの発想の転換が求められています。その理由は、DDSがdrugの生物効果を最大限に発揮させるための普遍的な基盤技術であるため、drugを扱っているあらゆる研究分野に適用できるからなのです。そのため、薬学だけではなく、基礎医学、生物学、臨床医学、工学など多岐にわたった研究がDDSというキーワードで関連してくるのです。それぞれの研究分野の第一人者が秘に温めているアイデアと分野の違いを超えたDDS概念の統一性が見えてくることもあるかもしれません。

DDSは、薬物治療を目標とした研究開発だけにとどまらず、生物医学研究、先端医療のための最先端の基盤技術です。日ごろからdrugの生物効果を最大限に発揮させたいと考えている研究の最前線の皆様に、そのために必要な材料と基礎要素技術、生物医学研究および予防、診断医学、再生医療、薬物・遺伝子治療への係わり合いなどについて理解していただき、それを自分の研究・開発に生かしていただきたいと考えております。そのための助けとなるような情報を今後提供していくことも考えております。典型的な学際領域であるDDSは、すでに薬剤学を超えて多くの分野の先端科学技術を巻き込んだ形で展開してきているわけですが、まだまだ新たな研究分野を巻き込む余地を残しています。また、得られたDDS概念をそれぞれの研究分野へ還元することにより真の学際融合領域となるものと信じています。




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精密機器メーカーの医薬業界への参入が最近 ...[続きを読む]
Tracked on 2006年11月20日 23:58



コメント

八木信彦@MedGELさん (2006/12/01)

スタバさん、コメントありがとうございます。
DDSは新しい医療技術・医薬品にますます大きな役割を果たすものと弊社では考えております。
今後ともよろしくお願いいたします。


★スタバさん (2006/11/21)

本日慶応大と共立薬科の合併ニュースが流れました。総合大学のもとでDDS研究がより盛んになると思いました。
コラムを拝見し、DDSが真の学際融合領域となりこの基盤技術で既存の医薬品、開発中止になった人類にとって有効な化合物を医薬品とするべく私も製剤研究に邁進したいと思いました。


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